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スタッフブログ

 先日、4月から5月にかけて電気の勉強会を開催した。これは新入社員教育のついでに機械やソフトなど電気以外の設計者に対して電気の基礎を理解してもらおうというものだった。定時後の2時間、全5回に渡って私が講師となって実施した。
 機械設計者もソフト作成者も日常的に電気を扱っているので理解は早かったがインピーダンスの説明は手間取ってしまった。そもそもインピーダンスに該当する日本語がないのが理解を妨げている原因でもあるようだ。レジスタンス(Resistance)は抵抗、キャパシタンス(Capacitance)は容量というように漢字で書くと実感しやすい。ところがインピーダンスは適当な和訳がされないまま今日に至っている。
 インピーダンスとは交流回路における電流の流れ難さの量であり、直流回路での抵抗と同じような概念である。単位も直流回路と同じくオーム[Ω]が使われる。しかしインピーダンスが抵抗と異なるのは周波数によってその値が変化する点にある。コイルでは周波数に比例して電流が流れにくくなり、コンデンサでは反比例する。それだけなら話は簡単なのだが流れる電流の位相が変化する点が話を難しくしている。つまりコイルを通すと電流の位相が電圧に対して90度遅れ、コンデンサでは90度進むのである。コイル、コンデンサさらに抵抗器が組み合わされると位相角はそれらのベクトル合成となり、どんどん複雑になる。
 これらのことを「インピーダンス」という言葉で表現している。適当な日本語訳が見つからないのも納得できる。そしてインピーダンスを数式で書く時には複素数を使う。横軸を実数、縦軸を虚数(-1の平方根)で表した座標だ。電気という目に見えないものを虚数というこの世にない数字で扱おうというのだから話がさらに分からなくなる。電気を志した学生がこの辺りでつまずいてしまうのも無理がない。私もそうだった。
 「誰が電気の世界に複素数なんていう訳の分からないものを持ち込んだんだろう?」と先達を恨むことしばしである。しかしじっくりこれに付き合うと「何と素晴らしい発想だろうか!」ということに気付く。1回掛けると位相が90度遅れ、2回掛けると位相が反転するということをjという一文字で表現しているのである(数学での虚数はiであるが電気では電流記号のIと区別するためにjと記す)。
 交流回路では複素数領域に一旦入り込んで演算を行い、注意深く実軸と虚軸に分離する。そして最後には三平方の定理と三角関数を使い、Ωを単位とするインピーダンスの絶対値と位相角という現実世界に戻って来るのである。
 インピーダンスはこの世の数字だ。それを虚数というこの世に存在しない数字を含んでいる複素数で扱うのは単にそれが便利な道具だからだ。何という柔軟な発想であろうか!電気理論の先達を恨むなんてとんだお門違いである。「水を飲む時には井戸を掘った人に感謝せよ」と言う。この辺りの思想もみんなに伝わっていれば幸いだ。Y.S.