明産株式会社

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スタッフブログ

 以前このブログでインピーダンスについて書いたのでついでにインピーダンスマッチングについても記してみる。と言うよりも、先に実施した社内勉強会でのインピーダンスの話はインピーダンスマッチングの必要性について説明するための前段の話であった。我々のようにデータ伝送を多用している者にとってインピーダンスマッチングは興味深いテーマである。

 インピーダンスマッチングとは信号の送り側と受け側のインピーダンスを同じにすることである。インピーダンスをマッチングさせる目的は2つある。1つ目はパワーロスを最小にするためである。
 これについては電気よりも音の方が実感しやすいので音響インピーダンスで説明する。我々が水の中に潜ると、水中に音源のある音は良く聞こえるのにそれまで聞こえていた空気中の音がとても小さくなることを体験する。これは空気中の音響インピーダンスと水中の音響インピーダンスが極端に異なることが原因だ。インピーダンスがマッチングしていないので空気中の音は水面で殆ど反射されて水の中に入ってこないのだ。つまりパワーが有効に伝わらないのだ。
 電気もこれと同じように送り側と受け側のインピーダンスが合っていないと反射が生じてパワーがロスしてしまう。例えば今なお根強い人気のオーディオ用真空管アンプでは真空管の高い出力インピーダンス(数kΩ)と、スピーカの低い入力インピーダンス(数Ω)とを合わせるために間にトランスをはさむ。トランスの1次側巻き線は真空管のインピーダンスに合わせるために巻き数が多く、2次側はスピーカに合わせるために少ない。トランスを介することによってインピーダンスマッチングが行われ、真空管のパワーは大きなロスを生ずることなくスピーカに伝わる訳である。もし真空管とスピーカを直接繋ぐとすれば完全なミスマッチングとなり、水中で空気中の音を聞く時のように極めて小さな音しか鳴らないであろう。
 蛇足ながらこのトランスの存在が良くも悪くも真空管アンプの音に大きな影響を与えているようだ。「それがまた魅力だ」と言う向きもあるがそれはここでは議論しない。

 インピーダンスマッチングの2つ目の目的は正確な波形伝送にある。何度も書くが送受のインピーダンスが合っていないと反射が生じる。それがパワーロスだけでなく、送られてくる信号の波形を変形させてしまうことにもなる。
 電気信号は導線中を光とほぼ同じ速さで伝わる。つまり1秒間に30万㎞の速さだ。オーディオ帯域の最高周波数は2万Hz(こんな高い音が聞こえる人は少ないが)である。この時の導線中の1波長は30万を2万で割った15㎞である。一般家庭で使うオーディオケーブルならばせいぜい数mであろうから15㎞に比べて遙かに短い。これならば例え反射が起きても信号波形に与える影響は無視できるほど小さい。一般向けオーディオ装置がインピーダンスマッチングを無視している(つまり低インピーダンス出し、高インピーダンス受け)のはこの理由による。ちなみに長い距離を引き回す可能性のある業務用装置はオーディオ帯域でもインピーダンスマッチングを図っている。

 低い周波数ではあまり問題にならないインピーダンスマッチングであるが、周波数が高くなる(つまり波長が短くなる)と事情は違ってくる。例えば地デジ放送電波のUHF帯である500MHzを考えると1波長は60㎝とぐっと短くなる。こうなるとインピーダンスマッチングができていない場合は数mの伝送でも反射の影響が現れてくる。つまり反射波が入射波に影響して信号波形を歪ませるのである。こうなると正確な信号伝送は期待できない。
 地デジ放送は搬送波である電波にデジタル信号を乗せる変調という処理をしているが、変調を行わず直接デジタル信号を伝送するSCSI、CANバス、イーサネット、HDMIなど高い伝送レート(つまり高い周波数)の信号でも同じことが言える。正確な波形伝送を必要とする高ビットレートのデータ伝送には伝送波形の歪みを避けるためにインピーダンスマッチングが欠かせない。バスの終端に、指定された数値の抵抗器を取り付けるのはこのためである。この抵抗器の値が受け側のインピーダンス値である。この抵抗器に送り側からの電気信号を流し込み、その抵抗器でパワーをロスなく消費させる。それによって反射の発生を抑えて波形の乱れを防ぐのである。

 高い周波数そして長い距離を送る場合には送り側のインピーダンスと受け側のインピーダンスを同じにすることが重要であることが分かった。その間を繋ぐ伝送路のインピーダンスを特性インピーダンスと称し、これもマッチングを図らなければならないがその話はまた次回。Y.S.