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 さていよいよ特性インピーダンスについて記すことにする。特性インピーダンスと言うとすぐに思い起こすのは同軸ケーブルの特性インピーダンスが50Ωや75Ωであることやツイストペア線のそれが100Ω前後であることだ。しかしテスターでどこをどう測っても50Ωや100Ωになったりはしない。また特性インピーダンスは長さが1mだろうが100mだろうが50Ωは50Ωのままである。特性インピーダンスとはいったい何者なのだろうか?

 特性インピーダンスも理解しやすい他の物で説明した方が良い。そこでアッテネータ(減衰器)の理屈を理解することから始める。アッテネータを図や数式を使わずに何とか説明しようと考えたがさすがに無理がある。そこでまずは図1を見て頂きたい。これは75Ω系の供給側と負荷側のインピーダンスマッチングが取れている状態を表している。供給側はインピーダンス0Ωの信号源とその信号源の内部インピーダンスとに分けて考えることができる。
 ここに図2のようなT字型のアッテネータを1個挿入する。アッテネータはインピーダンスマッチングを崩すことなく信号を減衰させる物だ。具体的には例えば図3のような抵抗値になる。これは6dBのアッテネータである。図3では供給側から右側を見た時に75Ωに見えることを確認されたい(100Ωの並列に25Ωが直列なので75Ω)。同様に負荷側から供給側を見ても75Ωである。ついでにこのアッテネータではV1の電圧がV2では1/2(つまり6dBダウン)となることも確認しておきたい。
 ではこのアッテネータを2個、3個と数珠繋ぎしたらどうなるだろうか?もちろんアッテネータだから信号は減衰し、受電側の電圧が1/2から1/4になり1/8と減衰していく。しかしちょっと考えれば分かるように供給側から見たインピーダンスはこのアッテネータが何個繋がろうと75Ωのままである(図4)。このアッテネータを「75Ω系のアッテネータ」と呼ぶ。しかしこのアッテネータ単体をテスターで測っても75Ωになっている所はない。

 同軸ケーブルもアッテネータと同じように考えれば分かりやすい。図5は同軸ケーブルの微少区間を単純化したものだ。これは先ほどのアッテネータ1個分と同じ形だ。図5での抵抗は、直列分は導体の持っている僅かな抵抗であり極めて小さい。また並列分は絶縁体の漏れに由来する抵抗であって極めて大きい。したがって理想的な同軸ケーブルがあったとすれば図6のように書ける。このL分とC分が常に均一になるように注意深く作られた同軸ケーブルはアッテネータの例と同じように何段重ねても(つまり何メートルでも)インピーダンスマッチングすることが理解できる。
 同軸ケーブルを物理的に何かで押さえて潰してならないのは、潰れた個所でC分が変化して特性インピーダンスが変化してしまうからだ。また同軸系ではケーブルだけではなく、コネクタまでインピーダンスマッチングを図っていることにも注目したい。せっかく正確な同軸構造や均一な絶縁体材質で同軸ケーブル作っても、そこを通って来た信号がコネクタでミスマッチして反射波を出すのは具合が悪い。SMA、BNC、N、Fなどのコネクタがインピーダンスマッチングを図った物だ。これらのコネクタはコネクタメーカの指示通り正確に組み立てないと本来の特性インピーダンスにならないので注意が必要だ。

 ところで同軸ケーブルもツイストペア線もなぜ50Ω、75Ω、100Ωなどの特性インピーダンス値なのだろうか?それはひと言で言えば単に「そうなるから」だ。
 同軸ケーブルの場合は絶縁体(つまり誘電体)の材質によってC分が変化する。絶縁体として空気を使った同軸ケーブルを作り、そのケーブルの損失が最も少ない構造にした時に75Ωの終端抵抗で最も良くマッチングしたことから75Ω系ができたらしい。また絶縁体にポリエチレンを使うと50Ωで最も良くマッチングするので50Ωを特性インピーダンスとして物もある。テレビ系は75Ω、無線系は50Ωを使うようになっている。
 ツイストペア線の場合も平行2線をよじった時に100Ω近辺で終端するのが最も良くマッチングするのだ。ちなみに電話系が600Ωなのは昔電信柱に渡した平行2線の特性インピーダンスが600Ωだったからだそうだ。正に「そうなるから」決めた数値だ。

 こうして見てくるとまず最初に伝送路(つまり同軸ケーブルやツイストペア線)の特性インピーダンスがあり、それに合わせるように供給側と受電側のインピーダンス値を決めたことが分かる。供給側、受電側そして伝送路、この3者のインピーダンスマッチングを図ることによってロスを最小にし、なおかつ伝送波形の乱れを最小にすることができる。電気の現象に理論付けをしてそれを実際に役立たせようとする先人達の知恵に驚かされる次第だ。

 なおRS485のようにレシーバを2個以上接続できるインタフェースは、レシーバの入力インピーダンスが高くできている。したがってドライバから見た場合レシーバは大きな負荷にはならず、ドライバから出た電流の殆どが終端抵抗で消費される。終端抵抗はツイストペア線の特性インピーダンスに合わせて100から120Ωにする。こうすることによって伝送ラインのインピーダンスマッチングが図られ、波形の歪みが極力抑えられる。そのラインに高い入力インピーダンスのレシーバが繋がることによってマルチドロップが可能となっている。Y.S.

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